砂漠の民

7/9
前へ
/86ページ
次へ
白蛇はあたしたちが構えてみせると、その大きな頭をくねらせ、大きな口を開けてこちらへと近づいてきた。 あたしたちは散り散りにそれを避ける。 あんな大きな口じゃ、人間なんてひと呑みにされてしまうんじゃない? あたしは白蛇の頭がペイのほうへ向いた隙に、そのとぐろを巻いた胴体へと剣を振り下ろした。 カツーン って、まるで金属でも叩いたような音と手応え。 もちろん白蛇は全然平気そうで、あたしを振り向きもしない。 白蛇の尻尾が、あたしを振り払おうと風を切って揺れる。 あたしは少し白蛇から距離をとり、態勢をたてなおす。 なにあの鱗っ。 あんなのに通じる力なんて…。 メリーの唱えた風魔法が白蛇の周りを囲み、風の刃となって白蛇を切り付けていく。 さすがの白蛇も魔法のダメージはくらうみたいだ。 ペイの相手をしていた白蛇の頭がメリーを振り返り、メリーは白蛇を睨みつけて、再度魔法を唱える。 そんなメリーの体に白蛇の長い舌が巻き付き、メリーの体を持ち上げ、苦しめるように締め付けていく。 「メリーっ!」 「…っ、大丈夫ですわ、リジー様…。 切り裂けっ、風牙っ!」 メリーはその顔に余裕の笑みを見せたかと思うと、魔法を放った。 竜巻のような強い風が吹き、白蛇を襲い、その舌を切った。 メリーごとその白蛇の舌は落下してきて、あたしは慌ててメリーへと駆け寄る。 「エスナ、メリーをお願いっ」 あたしはそう声をかけながら、続けてメリーに襲いくる白蛇の目に向かって剣を突き立てる。 剣は白蛇の目に突き刺さり、あたしはそのまま、剣を横にひき、白蛇の片方の目を潰した。 その直後に白蛇の体に飛び乗り、頭の上まできていたペイが、白蛇の口の中にナイフを投げ込む。 白蛇は頭を振り回し、のたうちまわり、ペイは白蛇の頭の上から飛び降りる。 あたしの言葉を聞いてくれたエスナが、メリーの体を宙に浮かせ、ゆっくりとメリーを地面におろしてくれる。 何かを考える間もないまま、更に怒り狂った白蛇が尻尾を振り回し、あたりの木々を薙ぎ倒してくれる。 少しくらい息をつかせてよっ。 あたしは内心思いながらも、倒れてきた木を避けて、肩で荒い呼吸を繰り返す。 鱗は硬い。 けど、その中身は柔らかいらしい。 剣で攻撃できるのは口の中くらいか…。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

275人が本棚に入れています
本棚に追加