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白蛇はあたしたちが構えてみせると、その大きな頭をくねらせ、大きな口を開けてこちらへと近づいてきた。
あたしたちは散り散りにそれを避ける。
あんな大きな口じゃ、人間なんてひと呑みにされてしまうんじゃない?
あたしは白蛇の頭がペイのほうへ向いた隙に、そのとぐろを巻いた胴体へと剣を振り下ろした。
カツーン
って、まるで金属でも叩いたような音と手応え。
もちろん白蛇は全然平気そうで、あたしを振り向きもしない。
白蛇の尻尾が、あたしを振り払おうと風を切って揺れる。
あたしは少し白蛇から距離をとり、態勢をたてなおす。
なにあの鱗っ。
あんなのに通じる力なんて…。
メリーの唱えた風魔法が白蛇の周りを囲み、風の刃となって白蛇を切り付けていく。
さすがの白蛇も魔法のダメージはくらうみたいだ。
ペイの相手をしていた白蛇の頭がメリーを振り返り、メリーは白蛇を睨みつけて、再度魔法を唱える。
そんなメリーの体に白蛇の長い舌が巻き付き、メリーの体を持ち上げ、苦しめるように締め付けていく。
「メリーっ!」
「…っ、大丈夫ですわ、リジー様…。
切り裂けっ、風牙っ!」
メリーはその顔に余裕の笑みを見せたかと思うと、魔法を放った。
竜巻のような強い風が吹き、白蛇を襲い、その舌を切った。
メリーごとその白蛇の舌は落下してきて、あたしは慌ててメリーへと駆け寄る。
「エスナ、メリーをお願いっ」
あたしはそう声をかけながら、続けてメリーに襲いくる白蛇の目に向かって剣を突き立てる。
剣は白蛇の目に突き刺さり、あたしはそのまま、剣を横にひき、白蛇の片方の目を潰した。
その直後に白蛇の体に飛び乗り、頭の上まできていたペイが、白蛇の口の中にナイフを投げ込む。
白蛇は頭を振り回し、のたうちまわり、ペイは白蛇の頭の上から飛び降りる。
あたしの言葉を聞いてくれたエスナが、メリーの体を宙に浮かせ、ゆっくりとメリーを地面におろしてくれる。
何かを考える間もないまま、更に怒り狂った白蛇が尻尾を振り回し、あたりの木々を薙ぎ倒してくれる。
少しくらい息をつかせてよっ。
あたしは内心思いながらも、倒れてきた木を避けて、肩で荒い呼吸を繰り返す。
鱗は硬い。
けど、その中身は柔らかいらしい。
剣で攻撃できるのは口の中くらいか…。
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