砂漠の民

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片目を失い、舌を失い、白蛇は怒っている。 気を抜くと本当に食べられてしまいそうだ。 その頭に弾き飛ばされたペイに回復の魔法をあて、あたしは白蛇に向かって構える。 メリーがまた魔法を唱えた。 大きな岩が空中に現れ、白蛇の体を押し潰すように落下した。 直後、白蛇は何かを吐き出すかのように、グッと息を飲み、そして本当に吐き出した。 人間を。 っ!? 一人…、二人…。 何人もの女性が吐き出され、降ってくる。 えっ、ちょっ… 「メリー、エスナっ!あの人たち落ちてくるよっ」 「魔法で受け止めますわ。エスナ、力を貸してくださいね」 メリーは白蛇の口から吐き出される女性を魔法で包み込んで、ゆっくりと地面へとおろしてくれる。 あれは…、あの人たちは、あの白蛇に食べられた人? 若くて綺麗な人ばかり。 あんなにたくさん。 それって…本当に神様なのっ? ペイはあたしが白蛇から吐き出された人たちに回復の魔法をあてている中、苦しみのたうち回る白蛇へと向かっていって。 その喉下から口の中を切り裂き、白蛇に留めを刺した。 ペイの剣の腕はすごいと思う。 あたしは、少し見とれてしまった。 巨大な白蛇は、ペイによって倒され息絶えた。 残されたのは白蛇から吐き出されたたくさんの女性たち。 すべての人が生きていたのが不思議なことだ。 あの白蛇の中は時空が歪み止まっていたのだろうか? ナチさんは一人の女性をその腕に抱きしめる。 それはあのシャグラーラの姿をした女性だった。 「神は…シャグ様はこの土地に住まうお方でした。古い時代から我々の民族と共に生き、生贄として若い女性を求め、喰らい、その体を依り代としておられました。魔王がいたときには、我々の住むこの土地を魔物から守ってくださりました」 ナチさんは落ち着くとそう語ってくれた。 生贄を要求する神様なんて…魔王や悪魔と大差ないと思う。 「ラーラは…、この女性は私が愛した人です。このオアシスへと迷い込んだよそ者の彼女を私が愛したことにより、神の怒りを買い、彼女を言われるままに…生贄に……」 俯くナチさんをラーラさんが支える。 シャグラーラ。ラーラさんの姿をしているからと、ナチさんはそう呼んでいたらしい。
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