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風のスクリーン
「『あ、ルウォーク。久しぶりぃ』ではないでしょうっ!?姫が婚儀の前に城を出られてから、何日たったと思っているのですっ?」
ルウォークはスクリーンにかじりつくように、あたしにきゃんきゃん吠えてくる。
うるさい。
あたしは耳を塞いで、ルウォークから顔を逸らす。
「っ!!そこの女官っ!おまえが姫をそそのかしたのだろうっ?メリーとかいったか?」
「ルウォーク様、お久しぶりでございます」
メリーは恭しくルウォークに頭を下げてみせる。
「姫をっ、姫をどこに連れ去るつもりなんだ、おまえはっ!」
「わたしはただ姫様についていっているだけですわ」
「なら、おまえは今どこにいるっ?今すぐ姫を連れて戻ってこいっ!!」
あー、うるさい…
耳を塞いでいても聞こえちゃう。
「あのね、ルウォーク。そんな話をするために、メリーがスクリーンを出してくれたわけじゃないの。お父様とお母様は?そこは謁見室でしょ?」
あたしはちらりと見えるルウォークの背後の景色に見覚えがあった。
謁見する場所…なら、お父様とお母様がいるはずなんだけど…。
「姫っ!?」
今頃遅ればせながらといった感じにスクリーンに見えたのは、エリュシオンだった。
ルウォークを押し退けてスクリーンの前に出てくるとは…。
「やほー」
あたしは軽くエリュシオンに手を振ってみせる。
エリュシオンの視線はあたしから、そのまわりへ。
ペイに目が止まる。
あ…。
「貴様っ!貴様が姫をさらったのだろうっ?今すぐそちらへ行くっ!場所はどこだっ?」
なんだかとても物々しい。
ペイは一つ溜め息をつくと、エリュシオンに見せ付けるように、いきなりあたしの肩を抱いてきた。
こんなときにドキドキしちゃう、あたし。
なんでこんな人が好きなんだろ?
「エリュシオン王子サマだったよな?ここはあんたの国、シェルーダの砂漠にあるオアシスだ」
「そこで首を洗って待っていろっ!」
「ついでにこのオアシスにいた人喰い蛇倒しておいてやったぞ」
「っ!!それはっ…いや、その…知ってはいたが……。その話には礼を言おう。しかしだなっ、貴様が姫をさらった罪は…っ」
「逃げられただけだろ」
「貴様を倒すっ!!」
話ややこしくしないでよ、ペイ…
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