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「ルウォークもエリュシオンも邪魔なんだってばっ!!」
あたしが声をあげると、二人はすすすっとスクリーンの前から消え、そこにお父様とお母様が映る。
綺麗なお母様と、少し老いたお父様。
相変わらず仲がよさそうだ。
このスクリーンを不思議そうな顔をして見ている。
ペイはさっきの悪ノリをやめて、おとなしくスクリーンの外へと出ようとしたけど、あたしはその服を掴んで離さなかった。
「お父様、お母様、お久しぶりでございます」
あたしはメリーを見習うように軽く衣服の裾を持ち上げ、頭を下げてみる。
「エリザベス…、これは…魔法なのか…?」
お父様が不思議そうに聞く。
「えぇ。私の側付きをしていたメリーが、こうして会話をするために出してくれました」
あたしがメリーを紹介すると、メリーはお父様たちに頭を下げる。
「私は元気でやっております。お父様やお母様がご心配なさるようなことはありません。
私が共に旅に出たこの女官は亡きマーベラスの姫であり、勇者と言われる男の妹です」
「ほぅ。勇者の…」
「そしてこちらの方は、勇者と共に旅をし、勇者と共に魔王を倒した男です」
あたしはお父様たちにそうペイを紹介した。
あたしは嘘をついてはいない。
盗賊とは言わなかっただけだもん。
盗賊らしくない盗賊を盗賊だと紹介する必要もないでしょ?
「なるほど。エリザベスはいい共を連れているようだな」
「エリザベス、婚儀がお嫌だったのでしょう?あなたの意見も聞かずに決めてしまったようなものでしたし…。婚儀をやめにすれば、あなたは戻ってきてくれるのでしょうか?」
お父様にかわるように、お母様がそう聞いてきた。
城を出たいと思った理由は、それもあるけど、それだけじゃない。
「お母様、私は…外の世界を見たいのです。いろんなことを知りたい。この旅の中で、あたしはいろいろなことを知り、成長するつもりです。ですから…」
あたしを…連れ戻そうと思わないでほしい。
お父様やお母様に言われたら、あたし…。
お父様とお母様は顔を見合わせて頷く。
「エリザベスが望むようにすればよい」
お父様はそう言ってくださった。
あたしは思わず泣いてしまった。
あたし、わがままだよね。
ごめんね、お父様。
そしてありがとう。
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