ディスタリア王国

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エリュシオンの国、シェルーダの砂漠を抜けて、更に東へ。 シェルーダの隣には、ディスタリアという大きな国がある。 シシルより豊かな国らしい。 金銭的には、シシルはきっとどの国よりも貧しいんだけど、そういう豊かさではなくてっ。 まぁ、とにかくディスタリアの森に入って野営の準備。 あたしは見慣れた木の実を集める。 食事は森の恵みを使った料理。 携帯食は尽きてしまったのだ。 たまに出てくる賊を倒して、ペイが金銭を巻き上げたりしているけど、そんなんじゃ足りないみたい。 あたしって貧乏姫だと思う。 姫なのに…。 でも、こうして食べられるものや、食べられないものを見分けることができるって、いいことじゃないかな? うん。これも勉強。 カサッと音がして振り返るとペイがいて。 「ペイ、たくさん木の実採れたよ」 あたしは抱えていた籠の中身をペイに見せる。 「次、きのこ狩りでもするか。この木にあるのは食べられるやつな」 ペイはきのこを一つとって、あたしの持っていた籠に入れる。 ふむふむ。 「こっちの斑点があるやつは毒きのこだから採るなよ」 ふむふむふむ。 あたしはペイの説明をよく聞いて、言われたきのこを採ってみる。 ペイを見ると、よしよしと頷いてあたしの頭を撫でてくれて。 ちょっとドキドキして…。 今、メリーいないよね? 今、いい雰囲気だよね? なんて思ってあたりを確認してみたりして。 ペイの手をそっと掴んで、ペイの目を少し上目使いで見つめて。 ペイがあたしに気がついてくれて、キス… って、そううまくいかないのがあたしたち。 「リジー様ぁ、あちらに川がございましたわ。水浴びなどいかが…」 そう言いながら現れたメリーを静かに見て、何もわかっていないメリーを見ると溜息をついた。 「そろそろお金を稼がないといけませんわね…」 メリーは森の恵みを使った食事をとりながら、溜息をつくように言った。 「この森を抜けるとディスタリアの首都がある。そこでしばらく稼ぐか」 ペイは狩った獣の肉を焚火であぶりながら言う。 あたしはエスナに木の実をあげながら、二人の会話を聞いていることしかできなかった。 いや、あたしも働くつもりではいるんだけど、そう。 あたし、自慢じゃないけど働いたことなんてない。
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