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「だからあたしは嫌だって言ったのよ!」
酒場に明らかに女性のものと解る怒声が響いたのは日が落ちて間もなくのことだった。
ばんっとテーブルに手を突くとぷるんとたわわな胸が揺れた。一言で言うとナイスバディでチャイナなねーちゃん。両手の手甲に付いた控え目なトゲトゲはかなり痛そうだ。
「そうかっかしないでよ、ファ」
そういいつつローブ姿の清楚(貧相?)な女性が宥める。宥めつつも彼女はエール酒から手を話す気はないらしい。
ちなみにもう一人いるのだが……卓上の食い物と格闘中である。
「ルナ、元はって言えばあんたの蒔いた種でしょうが!」
ファが意気込む。ルナはと言えば……悠然とエール酒を傾けたあと、口を開いた。
「過ぎた事気にしてもしょうがないじゃない。それよりも早く食べないとスノウが全部食べちゃうわよ」
にこっとした笑顔。きっとたいていの男なら骨抜きになるに違いない。しかし、女でしかも見慣れてるファには通用しない。
「あんたの笑顔にたぶらかされるのは馬鹿な男どもで十分だってのっ……ってスノウ、あんたも食ってないで話を聞けっ」
小突くというにはあまりにもな拳がスノウの頭にとぶ。
「ぶぺしっ」
意味不明な声をあげてスノウは料理に顔を突っ込んだ。
「ちょっとぉ、何するのよ、ファってば」
これもまた美人である……ただし顔に付いたソースや魚の身がなければの話である。
ぶっちゃけ巫女服なのだが……袖口が少し短めで腰に日本刀を挿してるのが少し違うところか。 「よく……呑気に食べていられるわね」
怒りに拳を震わせながらファは言う。
「あたしたち、指名手配されてるのよっ!」
いっそう激しい声が酒場に響き渡った。
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