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「しかし、何故当主はあのような男を後継ぎになさるつもりなんだ?」
自分の主である者の考えていることが理解できない黒いフードの男は、首を傾げながら赤毛の男へと尋ねた。
「今回の主の意向は僕にも掴めない。何か特別な意志が感じられたのだけど、あの者を後継ぎにする理由すらも予想できない」
赤毛の男は黒いフードの男に溜め息をつきながら困惑するように答える。
「おかしいだろ?この時期に後継ぎを決めるなんて自殺行為だ!今は大事な儀式の途中で、俺達ナイクルライヤの残党が当主の護衛をしなくてはならないというのに!」
興奮して誰にでもなく声を上げた黒いフードの男の顔面は怒りと焦燥感で真っ赤となっていた。
「そう唸るな。お前にこれを見せてやる」
そして赤毛の男は懐から一枚の紙を取り出して黒いフードの男へと受け渡す。
「……これは?」
それを受け取って目を通した黒いフードの男は、綴られている事項に理解できないでいた。
「当主からの伝達だ。この任はかなり重要なものだぞ?」
「"灰色の聖女には注意しろ。そして可能なら連行すること"……これが重要なことなのか?」
赤毛の男は笑みを浮かべて、その手紙を読み上げた黒いフードの男へと言葉を送る。
「そう、それが今回の任務の目的だよ。……今は分からないかもしれないが、後に真実が見えてくる」
それは待ち続けていた獲物をついに発見したかのような歓喜を表す笑みを赤毛の男は浮かべている。
「おい、標的が家から出てきたぞ。見てみるか?」
そして赤毛の男は黒いフードの男へと双眼鏡を手渡した。
「……まさか!あれが"灰色の聖女"か!」
黒いフードの男は双眼鏡を覗き込み、そこに映し出され女性に目を見開く。
そこには緑色のチャイナ服を纏って、瀕死状態の斑を引きずり回しているグレイの姿があった。
………
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