1.暗殺依頼

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――4―― 「……グレイ、俺は生きているのか?」 瀕死の状態であった斑が目を覚ますと、そこは事前に呼んでおいたタクシーの中であった。 「ええ、斑さんは生きていますよ。でも、私の手料理を食べて気絶するなんて失礼ではありませんか?」 気絶していた斑を膝枕していたグレイは、目を覚まして気分の悪そうに問い掛けてくる斑へと鋭く睨みつける。 「無理を言うな。これで生きてたのだから逆に褒め称えられても良いぐらいだぞ?」 横にしていた体を怠そうに起こした斑は窓の外を眺めて現在地を把握する。 「……空港まで一時間ぐらいだな」 現在の時刻は午前九時、斑は腕に付けている時計を見て呟いた。 「斑さんをタクシーへと運ぶのには苦労したんですよ?何か言うことがあるのではないですか?」 どうやらグレイは斑が毒物を食べて気を失った後、屋敷の前に呼んであったタクシーへと運んだようであるが、斑が気絶したのはグレイの作製した毒物が原因なので感謝する気は少しもない。 「それは苦労したな。それが嫌なら料理をしないことだ」 嫌味を言う斑にグレイの眼光は鋭さを増し、その禍々しい殺気は尋常なものではない。 「何故素直に礼が言えないのですか!」 「礼が欲しいならまともな食い物を用意してみろ!」 斑も負けずにグレイへと言い返すが、そんなものは最初から無駄である。 「料理の全ては愛情です!味なんて愛の前では無力でしかないのだから!」 「愛などいらん!そんなものは腹の足しにもならない!」 息を荒げて怒鳴り合う二人にタクシーの運転手は怯えて運転を続けている。 「……わかりました。今度からは味にも気をつけましょう!」 その激しい口論の末に、何やら先に自分の非を認めたグレイは腕を組んで偉そうな態度である。 口論の勢いで斑は何かを言いそうであったが、その寸前で我に返ることができた。 「ああ、そうしてくれると助かる。グレイ、それよりお前に聞きたいことがあるんだ」 いきなり話しの題が変わったことにグレイは疑問に感じたが、それを顔に出さずに返事をした。 「何ですか?」 「今気付いたのだが先ほどから俺達を尾行して、監視している二人の男がいる。お前の知り合いか何かか?」
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