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それを聞かれたグレイは不敵な笑みを浮かべて、後方から尾行を続けている黒いワゴン車へと視線を送る。
「斑さんにしては気付くのが遅いですね?あの二人は三日前から私達を尾行していましたよ。それに、私にはあんな不細工な者達に知り合いはいません!」
「それではあの者達は何者だ?何やら殺気が感じられる。それに尾行にも手慣れているようだが……同業か?」
斑は自分と同業者である可能性を考えたが、それにしては腑に落ちない部分が多くあった。
それは自分達を狙うにしては数が少なく、何より狙われる理由が見当たらない。
「斑さん、気にしなくても大丈夫ですよ!多分、あの人達は季節はずれのサンタさんですから!」
「何だその根拠のない解答!それにお前がサンタを出した時点で俺の返答が困る!」
グレイの眼には夢見る乙女のような輝きが宿り、斑の言葉など耳には届くはずがなかった。
「サンタさん、私にプレゼントをくれるために遙々極寒の北国から来てくれたのですね!」
「グレイ、一つだけ言っておくぞ?もしあの者達がサンタであったとしても、幼女の部屋へ不法侵入する輩である変態にはそれなりの罰を受けてもらう。まず初めにサンタの脱出経路を断ち、乗ってきたトナカイを殴殺して喰らってやる!そして変態の口に自ら用意したプレゼントをぶち込んで窒息死の刑に処する」
斑は何気なく残酷な言葉を紡ぎ出し、それを聞いたグレイは涙目になって反論する。
「サンタさんはどうでもいいですけど、トナカイさんだけは助けてあげてください!」
何とも卑劣なことを言い張る二人の姿を見ていた運転手は生きている心地がしなかった。
「まぁ、あの尾行をしている者がこちらに手を出さない限りは放っておくことにしよう。奴らが何者なのかも気になるからな」
「そうですね。相手の目的が知れない以上、こちらから仕掛けるのは危険ですし、何より今回の依頼が気になりますからね」
斑とグレイはそれ以上は語らずに話しを終わらした。
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