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その後、独り窓の外を眺めていた斑の耳に、タクシーの中で流れていたラジオのニュースが入ってくる。
そのニュースの内容は最近まで多発していた猟奇殺人の解決を報道しているものであった。
「はっ!あの死神も少しは手間取ったみたいだな」
そのニュースを聴いていた斑は愉快そうに笑みを浮かべ、友人であり宿敵でもある男を思い出している。
「死神とはこの前に斑さんが手合わせしていた黒髪の人でしたよね?なにか"殺戮の宴が始まる"やら"死を与えてやる"とかを好き好んで口癖にしている野蛮人みたいな人でした」
グレイは先日の斑の激闘を思い浮かべて何気なく問いかけてみた。
「いや、あいつは純粋な殺人鬼だよ。精神汚濁者の中では異端の者と呼ばれている」
「私なら三秒で血達磨にできますね。いくら人を殺す技術が優れていようとも所詮は生物、私達のように人外の者にはけして届きはしません」
「だが、あいつは俺たちに最も近い存在だ。個の実力においてもお前と同等の力だろう。まぁ、主となる能力を行使すれば勝負すらならないがな」
その話しを聞いたグレイは興味深そうに頷いて、何やら禍々しいオーラを笑いながら放っている。
「私と同等?ほぉ、それは興味が湧いてきましたね!ならば今度にでも闇討ちを仕掛けるとしましょう……うふふふふふ!」
「グレイ、それは止めておいた方がいい。でなければお前が殺されてしまうぞ!」
斑は怯えたような口調で騒ぎ出し、先ほどの余裕は一つも感じられない。
「何故です!斑さんは私が負けるとでも言いたいのですか!?」
「ああ、それは確実だな。あいつの周りにいる女は全て悪魔や野獣みたいな恐ろしい連中、あのひねくり曲がった性格はお前より驚異的と言えよう。だからお前は手を出すなよ?あの紅蓮の魔女や情報屋の復讐は生半可なものでは済まない!」
「……斑さん、貴方は本当に女性には弱いですね」
生暖かい視線を斑に送ったグレイは静かに呟く。
こうして斑とグレイは目的地である秋間矢空港へと到着したのであった。
………
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