2.刺客と試練

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――1―― 「よし、やっと秋間矢空港に到着だな。グレイ、荷物は大丈夫か?」 タクシーから下りた斑とグレイは荷物を持って前に聳え立つ秋間矢空港を見上げた後、周りを見渡す。 「はい、忘れていません。それより斑さん、この空港以前来たときより様子がおかしくなっていませんか?」 「おかしい?よく見てみろ、これはおかしいを超えて異常だろ」 そう斑は目の前にある光景を見て吐き捨てるかのように言い放つ。 それは異常としか思えない光景であり、不自然を超えて不明瞭な事態であった。 「ええ、何故人が誰一人いないのでしょうか?」 「……考えられることは罠か何かの事故による影響だが……後者は有り得ないだろう」 いつも多くの旅行者などで賑わっているはずの秋間矢空港には見る限り人は存在していない。 それは通常ではけして有り得ないことであった。 「それに、この気配は何でしょうか?中から不穏なものを感じます」 何かを感じ取ったグレイの表情は真剣なものとなっており、その場に緊張感を漂わせている。 「まぁ、中に入ってみれば分かることだ。そうすれば現状を把握できるだろう」 こうして斑とグレイは警戒しながらも秋間矢空港の中に入ってみたが、そこにも人の姿も存在すらもなかった。 「あらら、罠……でしょうね。受付にも人がいないなんて職務怠慢にもほどがあります」 秋間矢空港の中には静寂しか存在せず、グレイの嘆く声が響き渡っていた。 ―――――その時。 「本日は秋間矢空港に来てくださいまして誠にありがとうございます。快適な旅の前にお客様には素晴らしい催しがありますので、存分にお楽しみください」 呼び出しの電子音の後、女性の気味の悪いアナウンスがその場に鳴り響く。 「これはまた歓迎されたものだ。まさかこの場で試されるなんて考えていなかったぞ」 完全にアナウンスが鳴り止んだ瞬間、その場から無数の醜い獣が姿を現した。 その獣の姿は虎であったが、見るからにその醜さは生物の範疇を逸脱している。 「はっ!キマイラを出してきたか!合成生物を差し向けるなんて少し度が過ぎているな!」 そのキマイラを見た斑は目を細めて歪な笑みを浮かべていた。 キマイラの頭部は虎、胴は山羊、尻尾は蛇、羽はコウモリという恐ろしい容貌で、口から剥き出しの牙はより一層、醜さを醸し出している。
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