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「これが落ち着いてなんていられますか!?私達のことを絶対に嘗めているんですよ!」
女性は顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らし、青年の言うことなどその激情の前には微々たるものであった。
女性が怒鳴る際に口から飛び出る唾液を顔に受けている青年は手紙を封筒へと戻し、自分の下ろしていた腰を上げて立ち上がった。
「なら、その依頼主に会って文句を言えばいいだろ?」
それを言われた女性は驚いた表情で青年を見上げ、先ほどまでの怒りを完全に忘れている。
「……この依頼を受けるんですか?」
この怪しい依頼を受けることなど女性には考えもしなかったが、何故か青年は笑みを浮かべて頷いていた。
「ああ、先日の依頼の疲れも癒えた頃だし、そろそろ体を動かさないと鈍ってしまうからな。……まぁ、この送られてきた依頼の内容は理解できないが、何もしないよりかは良いだろ?」
何とも嬉しそうに語る青年の顔は目を奪われるほどに美しく、女性はその笑顔に心を踊らせながら感嘆の表情を表している。
「……まっ斑さんがそっそそう言うなら仕方がありませんね!私が助手として付き添ってあげますから感謝してください!」
女性の言動はそれを隠すようにしているが、動揺しながらも青年に告げるあからさまな態度は間抜けであった。
青年は全てお見通しであり、その女性の姿を見て意地悪な笑みを浮かべながらお礼の言葉を送る。
「ああ、ありがとう。グレイが付き添ってくれたら今回の依頼もすぐに片付く」
さらに顔が朱色に染まる女性は恥ずかしさに耐えきれずに話題を無理やり変えた。
「そっそれより!その依頼主にどうやって接触するつもりですか?会ってみなくては詳しい話しを聞けませんよね?」
「そうだな、一度会ってからでなくては依頼も受けられない」
青年は頷きながら先ほどの封筒に視線を向けて、この手紙を宛てた送り主の住所を調べる。
「何処から送られて来たのですか?」
好奇心のままに女性は青年へと尋ねてその答えを急かした。
「……またとんでもない所から送られてきたものだな」
それを見た青年は独り言のように呟きながら苦笑している。
「……グレイ、今回はキツい仕事になりそうだぞ?……この手紙の送り先は"滅亡都市ナイクルライヤ"からだ」
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