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「……グレイ、お前の頭の中には何が詰まっている?」
頭を押さえて溜め息をつく斑はグレイを馬鹿にしたような問い掛けを呟いた。
「豊富な知識と斑さんへの熱い愛情がぎっしりとはみ出すぐらいに詰め込まれています!」
「俺には腐った脳みそと底意地悪い知恵しか入っていないと思う」
円満の笑みで答えるグレイに斑は呆れつつ言い捨てる。
「そんなことを言う人にはグレイ特性の美味しい朝食を食べさせてあげません!」
「いらん!あんなものを口に入れた瞬間に絶命してしまうだろ!」
頬を膨らませながら恐ろしいことを言い出したグレイに斑は怖気を覚えつつも声を張り上げた。
まさにグレイの作る料理は猛毒より殺傷効果の高い瞬殺物。
一度でも口の中にそれを入れたならば、一瞬で三途の川を渡りかねないほどの危険物である。
「食べてもいないのに断定しないでください!」
「いや、見なくてもわかる。この鼻を刺激する臭いは確実に人を殺すものだ」
グレイは乗っていたベッドから立ち上がり、肩で風を切りながら斑へと近づき身を寄せる。
「不味くても私のこのメイド姿を見れば不思議と美味しく感じられるかもしれませんよ?」
「……もうわかった。だから早く支度をしてくれ!」
諦めた斑は抱きつくグレイを手で振り払いながら声を尖らせた。
「だから何処へ行くのですか?私はそんな約束をした覚えはありません」
そう言いきったグレイは斑の怒りを呼び覚ますのに十分な影響を与えていた。
「……グレイ、昨日の手紙の依頼を思い出してみろ」
「……手紙?」
グレイは腕を組みながら斑の言う手紙について思案に沈み、必死に思い出そうとする。
暫しの間に苦悶と自問自答を繰り返したあげく、グレイはとんでもないことを口走った。
「まさか私が知らない間にラブレターを貰っていたのですか!?私の留守中を狙うとは許せませんね!……斑さん、直ちにその不埒でふしだらな愚か者を暗殺しましょう!」
「違う!昨日に言ったナイクルライヤへの依頼だろ!どう考えたらそんな結論が出せるんだ!」
グレイの狂言に対して力の限り怒鳴り散らした斑の声は無惨にも枯れ果てていた。
「ああ、そうでしたね!確かにそんなことを言っていました!それならそうと早く言ってくださいよ!」
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