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何とも言えないような表情で斑はグレイを見つめ悲痛の声を呟き出す。
「……どうしてお前はいつもこうなんだ。少しはお前の相手をする俺の苦労を理解してくれ」
「ええ、理解してますとも!美しく愛らしい私を見て高鳴る鼓動が抑えられない斑さんの苦労を!」
宙に両手を伸ばして大きく広げるグレイには何やら神懸かったものを感じさせられた。
「もうお前は連れて行ってやらん。大人しく留守番でもしてお前が先ほど作った特製毒物の処理をしておけ」
そう言って心底呆れた表情を浮かべた斑は部屋を出て行こうとグレイに背を向けた。
「あー、ごめんなさい!謝りますから私を置いて行かないでください!」
その場に取り残されたグレイは慌てて斑を追いかけてゆく。
斑は不機嫌さを表情に表しながらグレイへと振り返り低い声で言葉を送った。
「なら早く出掛ける支度をしろ。空港に遅れれば飛行機に乗れなくなる」
「ふっふっふ!それなら安心してください!私は斑さんの家へいつでも生活できるように生活用品を常備用意してありますから!」
そう誇らしげに喋るグレイの姿は斑の恐怖心を高めるのに申し分ない。
毎日グレイは斑の自宅を訪れているが、それは穏やかな訪問ではなかった。
鍵をこじ開け、窓からの不法侵入、さらには地下通路まで用意している。
それに屋敷には無数の空き部屋が存在し、そのどこかにグレイの秘密研究所という意味不明なものを勝手に拵え占領しているのである。
そして斑が寝ている間に家へと侵入して毒物の制作や寝込みを襲われるのが毎日のように続いていた。
「………」
「それでは支度をしてきますので、斑さんは朝食でも召し上がっていてください」
何やら楽しげに寝室を出て行くグレイの姿を斑は悲しさの溢れる姿と無言で見送っていた。
そして斑はグレイの作ったこの世に存在してはならない物を葬ろうと寝室を立ち去ろうとした瞬間、ある物に目を奪われ立ち止まってしまった。
「……これは」
それは窓の扉に挟まれた一枚の茶色の封筒。
不自然に置かれている封筒に斑は不審に思いながらもそれに手を伸ばした。
「また同じ封筒か……何者かは知らないが、ふざけたことをする」
斑は封を切り中身の用紙を慎重に取り出して、その怪しげな手紙を広げて目を通す。
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