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不意にエリカの足が止まった。
(……多いな)
エリカは心中でそう呟くと空へ向け掌を翳した。
「我、空を統べ、蒼を欲す。我呼び声に応えよ、天の蒼弓【エルヴァリーテ】」
彼がそう唱えると翳した手に大きな弓が握られていた。
それを弓と言っていいのか……。
東方の島国の剣――刀――その中でも大きな“太刀”と呼ばれる物を二振り、柄の部分を繋げた様な形状をしている。
その上、それには弦すらなく最早刃物といっても間違いではないだろう。
エリカは不造作にそれを構えると、まるでそこに弦が在るように“引く”と、それを“射た”。
「グォォー!」
シュッと微かに空気を震わせる音がすると、少し遅れて獣の悲鳴が森に轟いた。
それを聞きながら、エリカは向きを変え次々に“射て”いく。
その度に断末魔の悲鳴が森中に響きわたる。
しばらくして、エリカが射るのを止めると、風すらやんで森は完全な静寂に包まれていた。
「……粗方、一掃したか」
彼はそう呟くと再び歩を進めて行った。
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