ある田舎の風景

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カキーーーン 史郎が打った球が空に向かって真っ直ぐに飛んでいく。 グラウンドで応援していた紗菜は興奮して隣に座っている姉の真美子の腕をひっぱり、 「姉ちゃん!史郎ちゃんホームランだよ!すごいすごいすごーい!」 と大興奮だ。 真美子はそんな紗菜を横目で見ながら、 「うるさい!あの野球バカがホームラン打ったくらいなんなのさ!」 とうとましそうに手を振り払う。 「だって史郎ちゃんすごいもん!すっごいボールが飛んでったもん!」 紗菜はキラキラした目で笑顔でグラウンドを回る史郎を見つめる。 紗菜の目には、そんな史郎がこの間見たディズニー映画の王子さまより、誰より輝いて見えた。 史郎、真美子10歳、紗菜は8歳の夏。
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