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  少し眠くなってきた。 「ここで寝るの?」 「んー…」 「津田」 机越しに伸びてきた手が肩を揺さぶる。肘をついた手に額を預けて、重い瞼を閉じかけたとき…蜻蛉の声が 「津田…襲われるよ」 思ったよりもずっと、近くで聞こえた気がした。 顔を上げると、彼はさっきと同じ場所に座っていた。俺の肩を揺らしていた手も今は机の上に無造作に置かれている。 不意に、思い出した。 「蜻蛉、昔から実は性格が悪かったろう」 蜻蛉は、薄い唇を綺麗に弓なりにすると 「気づいてたのは津田だけだったよ」 と、艶やかに微笑んだ。  
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