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  担任の敷島清二。 今日も七三に撫でつけたヘアスタイルの彼は、眼鏡の奥の湿っぽい目で教室内を見渡す。 「おはよう」 はっきり言って、地味でダサくて気持ち悪い。クラスどころか学年…いや学校中の生徒の嫌われ者だ。 「佐伯ぃ、俺さ~次の授業あたるんだけど全然解んねぇの。答え見せて!」 「………」 休み時間に入るや否や、二列隣りの席の高柳が泣きそうな顔で駆け寄ってきた。それに眉をひそめるでもなくノートを広げて手渡してやると、途端に教室のあちこちから、俺も私もとクラスメイトが群がってくる。 (馬鹿ばっかり) 胸中の侮蔑は噫にも出さず、軽く肩を竦めて困ったように微笑んだ。 成績は学年トップクラス、学級委員長を勤め、性格も社交的とくれば、教師からも生徒からも信望厚い俺。運動も嫌いじゃないけど、部活は幽霊部員ばかりの映画研究部に所属している。 ガラガラ…。 視聴覚室の扉を開けると、長机を二つ挟んで窓際のパイプ椅子に敷島が座っていた。こちらを見て「今日は遅かったな、佐伯」と湿っぽく話しかけてくる。 「すみません。今日は委員会があったもので…」 嘘ではない。文化祭が近いせいで、最近は委員会だ何だと召集が多いのだ。なるほど…と敷島は頷き小さくため息を漏らす。 「文化祭の出し物、うちの部も早く決めないとな」 だが部員と言っても今日も居るのは俺一人。顧問と二人で、一体何が決まるというのだろうか。 「先生、お借りしていたDVD持ってきました」 「ああ」 鞄から取り出したそれを、差し出した先、受け取ろうと伸びてきた白い指を… わざと軽く撫でて、手放した。 カシャ …ン。 「…落としたりしたら壊れちゃいますよ、先生」 「………」 敷島は、青い顔をして俯いてしまった。  
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