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  冬二は優しい。黒くて短めの清潔感のある髪を靡かせ、フレームの細い眼鏡をかけて、今は俯き加減で手元の本に視線を落としている。前の席に腰掛け、課題に取り組む振りをしながらお前を盗み見る図書館でのひと時。静かで穏やかなのはきっと場所のせいだけじゃない。冬二と居ると周りにはいつもそんな柔らかな時間が流れている。女の子が彼氏や旦那の条件にあげる「優しい人」ってのはきっと冬二みたいな奴のことなんだろう。噂の草食系男子?でも頼りないって訳じゃない。声を荒げた所も取っ組み合いの喧嘩をしている所も見たことないけど、弱そうには全然見えないし。俺と殴り合ったらどっちが強いだろう…う~ん判からん。でも勝てる気はしねえな。  
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