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「どうなんですか?
息子は?」
佐悟郎の母親の栄子が医師に訪ねている。
「今はなんとも言えません。意識さえ戻れば大丈夫だと思うのですが……。
意識が戻らない時は覚悟しておいて下さい。」
医師が栄子にはっきりとした口調でせつめいする。
「先生!
大丈夫なんですよね?」
心配そうな母親は必死で医師にたずねている。
「まだ、なんともいえません。」
そう言うと医師は病室を出て行った。
「意識はなくても、痛みで暴れる事もありますので、動かないように注意してくださいね。」
医師の横で立っていた看護師の女性が栄子に説明している。
当の僕はその様子を天井からぼんやりと見ていた。
僕はベッドに点滴やら包帯やらで見るも無残な様になっている自分を天井からぼんやりと見ていた。
『え~と、たしかバスケの練習してて、暗くなってからチャリで帰ったんだっけ?
それから……。』
僕はボンヤリと考えていた。
すると遠くの方から僕を呼ぶ声がした。
『?』
振り返ると眩しい光の中に奇麗な女性が僕を呼んでいた。
フラフラと女性に近付こうとしたその瞬間だった。
『ぷ~ん』
僕の鼻に病室から立ち去ろうとしていた看護師の香水の香りがして、
『ああ。
スゲェ~いい香りだな』
なんて思っていると僕のまわりがいきなり真っ暗になった。
そして、僕は再び意識を失った。
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