幼き日

6/18
前へ
/594ページ
次へ
『ちょっと待って!』 立ち去ろうとする猫を、隼人は呼び止めた。 「なんだい?」 猫は顔半分だけをこちらに向け、言った。 『あの……その……』 「?」 『俺と……友達になって!』 「……え? 俺はいいけど、君……変な目で見られないかい?」 『友達なんて……いないよ。だから毎日寂しい思いするより、友達と一緒の方が全然いいもん……。それに喋る猫が友達なんてみんなに自慢できるし』 隼人は俯き、そう言った。それに答えるように、猫はこう言った。 「君、名前は?」 『え……俺の?』 「君以外に誰がいるんだい? これから友達になるのに、お互いの名前を知らないなんて、変な話だろ?」 隼人は、うっすら目に涙を潤ませ、微笑みながら自分の名前を言った。 『俺……隼人。陸奥隼人!』 「……むつ……はやと君か」 『うん! 今度は君の番だよ』 「俺の名前は、セツナ。よろしくね、隼人」 『……うん!!』 こうして隼人とセツナは出会った。 ここから物語はゆっくりと……だが、確実に動いていく。
/594ページ

最初のコメントを投稿しよう!

434人が本棚に入れています
本棚に追加