今なら

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君と出会って、 君と付き合って、 君と別れて、 君がいなくなって、 あれからもうこんなにも 時間が過ぎた。 俺はもう 新しい生活を始めてる。 子供は3人、 誰よりも愛しい妻がいる。 あの頃とは違う幸せが 俺にはある。 これが俺のずっと 探してたものなのかどうかは よく分からない。 なぁ… 君はもうとっくに 忘れただろうな。 俺のことも 嬉しかったことも 悲しかったことも ………この景色すらも…。 だけど たった1つ君は覚えてた。 この病院の 屋上の塀の棒の6本目、南西。この町で 一番高い2つのビルの間。 君がずっと紙飛行機の手紙を 飛ばしてた場所に 俺はすっごく 嬉しいことがあったとき、 すっごく 悲しいことがあったとき、 君と同じように 紙飛行機を飛ばしてる。 あの場所だけを 紅里…… 君は忘れないでいてくれたな。 君が忘れたことも 俺が覚えていることも あの場所も… 俺の中ではまだ色づいて 変わることがないよ。 .
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