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悪ふざけが過ぎる、と思った。
いくら酒に酔っているとはいえ、二人を好奇の目にさらすなど……。
しかし、額田の態度は堂々としていた。
「大王(おおきみ)さまのご所望とあれば」
額田はスッと立ち上がると、一回大きく深呼吸した。
皆の視線が彼女に集中する。
「あかねさす……」
あかねさす 紫野(むらさきの)行き 標野(しめの)行き 野守(のもり)は見ずや 君が袖振る
<万葉集巻第一・二十>
【茜色に輝く紫草(むらさき)の野を行き、その御料地(ごりょうち)を行きながら――
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