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――まぁ、野守に見られたらどうなさいますの。そんなに袖をお振りになったりして……】
「……さすがは額田だな、いい歌だ。のう、大海人よ」
父の言葉に、大海人さまは軽く頭を下げた。
その表情からは、彼の心中を察することはできない。
そして、皆の視線は額田から大海人さまへと移行する。
大海人さまは意を決したように、その腰を上げた。
「それでは、額田どのの歌にお答えいたしましょう」
紫草の にほへる妹(いも)を 憎くあらば 人妻ゆゑに われ恋(こ)ひめやも
<同・二十一>
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