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「吾は……貴女とのことは誰にも知られていないと思っていたのに、まさか額田に露見(ろけん)していたなんて……。やはり巫女だから何もかもお見通しなのか……」
動揺する天皇に対し、鏡は迷いなくきっぱりと言った。
「巫女の力は関係ありません。女は嫉妬深いですし、勘も鋭いのですよ」
扉の開く音がした。
天皇が顔を向けると、すまなそうな表情をした刀我の顔をそこに見て取った。
「お話中に申し訳ございません。天皇さまのお付きの方が、もうそろそろとおっしゃっておりまして……」
いつの間にか帰る時刻になっていたらしい。
もっと話をしたかったが、天皇には仕事が山のようにあるし、病人に無理をさせるわけにいかない。
天皇は鏡のほうに向き直った。
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