57人が本棚に入れています
本棚に追加
地上での蝉の命は一月(ひとつき)だと聞いた。
この鳴き声が聞こえなくなると同時に……いいえ、その前に、私の命はなくなるだろう。
けれど、最後にあの人と話すことができて良かった。
すべてを伝えることができて良かった……。
鏡は顔を戻すと再度目を閉じ、静かに呟いた。
「……もう何も、思い残すことはございませんわ……」
翌日、鏡がなくなったとの知らせが天皇のもとに届いた。
息を引き取った時、その顔はとても幸せそうに、ほんのりと微笑んでいるように見えたということだった。
―結―
最初のコメントを投稿しよう!