夜の悉(よのことごと)

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  そう言って、額田は深々と頭を下げる。 「別に額田が悪いわけではないわ。父のご命令ですもの、断れないでしょう?……ただ、私には分からないの。なぜあの父が、あなたたちがまだ想い合っているのを黙認しているのか。むしろ、楽しんでいる節さえあるような……」 額田は「ホホッ」と、口元を押さえて笑った。 「それは仕方のないことですわ。だって……大王さまは私を“女”としては愛しておられませんもの」 ――えっ? 私は耳を疑った。 父が額田のことを愛していないだなんて、そんな……。  
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