小夜の寝覚

5/13
前へ
/191ページ
次へ
  溜息こそつかなかったが、顔には表れていたのだろう。 お父さまが厳しい目を私に向けた。 「なんだ、もっと喜ばないか?女として、これほどめでたいことはないのだぞ」 お母さまは、今度は違う意味で落ち着きがなくなり、オロオロと心配そうに、私とお父さまの顔を交互に見比べていた。 少しはじっとしていられないのかしらと、しらけた気持ちになる。 「申し訳ございません。ただただ驚いてしまい、言葉が出なかったのでございます。とても嬉しく、光栄に思っておりますわ」 この言葉を、お父さまがどう受け取ったのか……多分、心からの発言とは思っていないだろう。 お父さまは勘の鋭い人だ、嘘などすぐに見通してしまう。  
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加