小夜の寝覚

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蘇我本宗家はその昔、父方のお祖父さまによって滅ぼされており、当時まだ生まれていなかったお父さまも、そのいきさつは十分に理解しているはず。 ――蘇我氏は、決して天皇家を乗っ取ろうとはしていなかった―― 賀茂氏は古来より、ヤマトの歴史を語り継いできた一族だった。 私も、母方のお祖父さまから、すべての歴史を聞かされて育ってきた。 だから、蘇我氏は必ずしも“悪”ではなかったという事実が、賀茂の血を引く私の口から息子に伝えられることを恐れたのではないだろうか? お父さまが何を目指しているのか、知らぬ存ぜぬを決め込んでいたけれど、本当は薄々気づいていた。 あの人は、天皇家の外戚を藤原(フジワラ)一門で塗り固めて、その権力を合法的に奪おうとしているのだ。
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