57人が本棚に入れています
本棚に追加
「どういうことなの?愛していたからこそ、大海人さまから奪う形で、父はあなたを妻にしたのではないの?だから、私とお姉さまをその引き換えに……」
今から約十年前。
大海人さまと額田は、人も羨むような仲睦まじい夫婦だった。
二人の間には十市皇女(トオチノヒメミコ)も産まれて、まだ幼かった私から見ても本当に幸せそうだった。
……それを父は引き裂いた。
皆は噂したものだ。
額田を自分のものとした見返りに、私と、今は亡き姉・大田(オオタ)を大海人さまに差し出したのだ……と。
額田は静かに首を横に振った。
「大王さまは私の巫女的能力と歌の才を愛しているのであって、私自身を愛しているわけではありません。彼にとって、私は宮中祭事の道具でしかありませんのよ」
最初のコメントを投稿しよう!