小夜の寝覚

12/13
前へ
/191ページ
次へ
  いっそ気がふれてしまえば楽なのに、それすらも許されない。 生きながら死んだも同然のこの生活に、なんの希望が見出せようか? 今日も扉が開く。 いつものように、食事の時間がきたのね。 ……? 違う、わ……朝餉(あさげ)の時間からそれほど経っていないもの……。 顔を上げ、扉の方に向ける。 逆光で顔は分からないが、体つきからして、毎日食事を運んでくる侍女とは違う。 男の人? ……僧侶さまかしら……? その人は私にゆっくりと近づき、手を差し伸べてにっこりと微笑んだ。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加