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だが、食べられるだけ幸せなのかもしれない。
家にあれば 笥(け)に盛る飯(いい)を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る
〈万葉集巻第二・一四二〉
腰を下ろした場所は、大きな松の下だった。
目の前は断崖(だんがい)、荒れ狂う波が眼下に広がる。
……いっそのこと、ここで飛び降りたほうが……。
いや、やめておこう。
この期(ご)に及んで悪足掻(わるあが)きなど、するだけ無駄というものだ。
せめて最期ぐらいは、潔く散ろうではないか。
……だが、もし万が一、罪を免(まぬが)れ生き長らえることができるのであれば……。
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