霊柩車

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霊柩車

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ Kさんという若い女性が、両親そしておばあちゃんと一緒に住んでいました。 おばあちゃんはもともとはとても気だてのよい人だったらしいのですが、数年前から寝たきりになり、だんだん偏屈になってしまい、介護をする母親に向かってねちねちと愚痴や嫌味をいうばかりでなく「あんたたちは私が早く死ねばいいと思っているんだろう」などと繰り返したりしたため、愛想がつかされて本当にそう思われるようになりました。 介護は雑になり、運動も満足にさせて貰えず、食事の質も落ちたために、加速度的に身体が弱っていきました。 最後には布団から起き出すどころか、 身体も動かせず口すらもきけず、ただ布団の中で息をしているだけというような状態になりました。 はたから見ていても命が長くないだろうことは明らかでした。 さてKさんの部屋は2階にあり、ある晩彼女が寝ていると、不意に外でクラクションの音が響きました。 Kさんはそのまま気にせず寝ていたのですが、しばらくするとまた音がします。 何回も何回も鳴るので、時間が時間ですし、あまりの非常識さに腹を立ててカーテンをめくって外を見ました。 Kさんはぞっとしました。 家の前に止まっていたのは大きな一台の霊きゅう車だったのです。 はたして人が乗っているのかいないのか、エンジンをかけている様子もなく、ひっそりとしています。 Kさんは恐くなって布団を頭から被りました。 ガタガタとふるえていましたが、その後は何の音もすることなく、実に静かなものでした。
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