霊柩車

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ところがどうでしょう。 いつもはひっそりとしていた車から、何人もの黒い服を着た人達が下りてきて、 門を開けて入ってくるではありませんか。 Kさんはすっかり恐ろしくなってしまいました。 そのうちに階下でチャイムの鳴る音が聞こえました。 しつこく鳴り続けています。 チャイムは軽いノックの音になり、しまいにはもの凄い勢いでドアが「ドンドンドンドンドンドン!」と叩かれ始めました。 Kさんはもう生きた心地もしません。 ところがKさんの頭の中に、「 もしかして玄関のドアを閉め忘れてはいないか」という不安が浮かびました。 考えれば考えるほど閉め忘れたような気がします。 Kさんは跳び上がり、ものすごい勢いで階段をかけ下りると玄関に向かいました。 ところがドアに到達するその瞬間、玄関脇の電話機がけたたましく鳴り始めたのです。 激しくドアを叩く音は続いています。Kさんの足はピタリととまり動けなくなり、 両耳をおさえて叫び出したくなる衝動を我慢しながら、勢いよく受話器を取りました。 「もしもし!もしもし!もしもし!」 「○○さんのお宅ですか」 意外なことに、やわらかい男の人の声でした。 「こちら警察です。実は落ち着いて聞いていただきたいんですが、先ほどご両親が交通事故で亡くなられたんです。あのう、娘さんですよね? もしもし、もしもし・・・」 Kさんは呆然と立ちすくみました。 不思議なことにさっきまでやかましく叩かれていたドアは、何事もなかったかのようにひっそりと静まり返っていました。 Kさんは考えました。もしかしてあの霊きゅう車は両親を乗せに来たのでしょうか? おばあちゃんを連れに来たのでなく? そういえば、おばあちゃんはどうなったのだろう? その時後ろから肩を叩かれ、Kさんが振り返ると、動けない筈のおばあちゃんが立っていて、Kさんに向かって笑いながらこう言いました。 「お前も乗るんだよ」     ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
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