そのときは僕が

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「それから・・・・一度・・・がはっ・・・一度でいいんです」 だんだんと、君の心臓の音が小さくなる。 「一度でいいんで、海へ・・・うぐっ・・・わたくしのために・・・海へ行っていただけませんか?」 「海・・・・?」 「は・・・・げふっ・・・はい・・・」 そっか、君は海が好きだものね。一度なんていわず、何度でも行くから・・・・ 「死なないでよぉ・・・・」 ポロポロと涙があふれてくる。 君の手が、僕の頬を優しく撫でる。 「もうしわけ・・・ございません・・・ぜぇ・・・」 君の口元から流れる血をすくう。 「最期に・・・もうひとつ・・・っ・・・」 あぁ・・・言わないで・・・・。 「わたくしは・・・・」 いやだ。本当に、最期になっちゃいそうだから・・・。 「あなた様を」 それ以上は聞きたくないよ・・・。   「愛しておりますわ・・・・」 今までで、一番の笑顔で、君は・・・・・逝ってしまった・・・・。 そして、君の首がうなだれ、体の力がぬけた。口元に、微笑を残したまま。
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