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お互い目をそらせず、緊迫した空気が辺りを包んだ。
龍樹も引くに引けない状況でどうしたらいいのかわからない。
そんな張り詰めた状態を男は笑みを見せることで崩した。
「儂の剣を避けたのはお主が初めてじゃ。お主、名はなんと申す」
「……人に名前を訊く前に、自分が名乗るのが礼儀だろ?」
物騒な雰囲気を持つこの男に、こんなことを言っても大丈夫なのだろうか、という疑問が一瞬頭の中を巡ったが、龍樹は自分の主張を貫いた。
(このまま、斬り殺されたりしないよな……?)
龍樹はごくりと唾を呑んで、男の動向を見守った。
次の瞬間、男が大笑いした。
「わははははは!!!お主面白いのう。まだ儂に面と向かってそんなことを言える者がいたとは……」
(俺、そんなにウケること言ったか?)
龍樹は笑い続ける男を呆然として見た。
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