ハーメルンに歌声を

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   私ね、歌うのが大好きなんだ。おっきい声で歌うとすっきりするし、上手ーくリズムにのればそのままテンション上がってくし。それになにより… 「ね、ね、もっと歌ってよ」 「だめだよ、疲れさせちゃうもん」 「でもー…」 『大丈夫だよ、私ももうちょっと歌いたかったし。何の歌がいい?』 「やった!優しい歌がいいな」 「僕元気が出るやつがいい!」 『はいはい、ちゃんと一曲ずつ歌うから』  そう…聴いてくれる存在がいる、気持ちよさ、心地よさ。  特設ステージはベッドの上、ゆるい感じの部屋で唯一高級感のあるコンボのまん前。そこで私は毎日、足元でひざを抱えてきらきらした目で見上げてくれるこの子達のために、歌を歌う。  特別歌が上手いわけじゃない。カラオケだって、めったに90点超えないし。でも…でもね、負け犬の遠吠えかもだけどね、楽しいから、いっかなぁって。この子達も喜んでくれるし。  …まぁとにかくっ、私は歌うのが大好き。ううん、呼吸と同じくらい、大切。 「歌わないのー?」 「ひとりで笑って変なの」 『あっ、ごめんごめん。で、何の曲だっけ?』  
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