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私はそのまま家には帰らずに直美の家に行った。
『こんな夜中に誰よ。非常識な…』
インターフォンを鳴らした後、扉の向こうから不機嫌そうな直美の声。
すぐに扉は開いた。
『千里?アンタ何?どうしたの?』
驚く直美。
無理もない。
私から直美の家に行く時は必ず連絡をしてから行くのが当たり前だったからだ。それが突然体を震わせたまま訪ねてきたのだから驚くに決まっている。
『千里?千里?アンタ呑んでるの?』
呆然と立ち尽くす私に直美は頬を軽く叩いて言った。
『ど…どうしよう…直美…私…私…』
それだけ言うのが精一杯で、どう仕様もなくなっていた。
『取り敢えず中に入りな』
直美はそう言いながら私を部屋に入れてくれて、ソファーに座らせてくれた。
『…アンタ、酒なんか呑んじゃダメなはずでしょ?』
そう、私はある事情からアルコールは禁止されていた。
直美は私の事を一番理解してくれている。
故に、口調が少しキツくなっていた。
『直美、私、私…樹里に嫌われた…きっと…嫌われ…』
言葉にすればする程頭の中は混乱して、堪えていた涙が溢れ出た。
直美は泣き出した私を抱き寄せ、背中をさすりながら落ち着かせてくれた。
『ゆっくり、ゆっくりで良いから何があったか教えて?』
優しい直美の声。
私は言われた通りにゆっくりいきさつを話した。
『…成る程ね…よしよし、まだ会わせるのは早かったなぁ』
直美は私を優しく抱き締めたまま言った。
『…どう言う事?』
『んー、樹里ちゃんもね、アンタ程ではないけど辛い恋愛してきた子でね。もしかしたらアンタと巧くいくかなって楓と話してあの日会わせたんよ。でも…まだアンタには早かったね』
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