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直美の言葉に私は驚いた。
それと同時に走って逃げた事や電話に出なかった事、携帯の電源を切った事、色々な事が頭の中を廻った。
『ど、どうしよう。私、樹里の事傷付けたかも…』
『…そりゃ、逃げられた上に携帯の電源切られたらねぇ…千里、アンタの携帯貸して?私が樹里ちゃんに電話するから』
私は言われるままに携帯を渡した。
直美は私を気遣って別室で電話をしに行った。
直美が樹里と話している間、私は自分の気持ちの整理をしていた。
何故逃げた?
何故電話に出なかった?
それは恐かったから。
樹里の反応、樹里への想い、恋愛をすると言う事。
全てが恐かった。
誰かを好きになると言う事がどんな事か分からなくなっている私にとって、樹里の存在は安心出来る存在であり不安や恐怖を感じる存在だった。
『樹里ちゃん、やっぱりずっと探してたみたいやよ?』
電話を終えた直美は樹里がずっと私を探していた事と泣いていた事を教えてくれた。
『…今日は遅いから寝よ?泊まってくでしょ?』
『うん、ごめんね?有難う』
“いえいえ”と直美は微笑んでくれた。
直美の家はベッドがシングルな為、私は直美が“ベッド使いな?”と言ってくれたのを断ってソファーで寝る事にした。
横になって電気を消した時、直美が不意に言った。
『…樹里ちゃんさ、めっちゃ良い子やよ。千里もそう思うでしょ?』
『うん』
『もうそろそろ良いんじゃない?冒険するつもりで、さ』
『…うん』
冒険…。それは私に芽生えた樹里への恋心。
忘れていたんじゃない、忘れようとしていた“誰かを好きになる”と言う感情。
でも、それを認めてしまう事の恐怖や自分が傷付く事、樹里を傷付けてしまう事への恐怖感が私を襲う。
一晩中樹里の事を考えた。
直美と楓ちゃんがくれたきっかけ。
一晩中考えて考えて出た答え。
―私は樹里が好き。
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