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『…樹里…これ見て…?』
堕ちきったように固まっている私に、千里は自分の左手首を差し出してきた。
目に映ったモノは所謂リストカットの痕。
古い傷から新しい傷まで…。
『これ…』
『うん、気持ち悪いでしょ?パニックになるとね、知らないうちに切ってたり…不安になって切らないと落ち着かなかったりするの。病院にも通ってる』
千里は涙を拭き、今度は唖然としている私の方をしっかりと見詰め淡々と続ける。
『こんなんでも…私が好き?』
そして、覚悟を決めたかのように私に問い掛けてきた。
『うん、好きだよ』
傷を見て驚いた、それは確か。
だが、気持ちが変わる事はなかった。
『同情や半端な気持ちならダメよ?そんな事だったら私は樹里を傷付けてしまうから』
千里がいつも長袖だった理由。
それがまさかこんな事だとは思ってなかった。
でも、千里が言う“気持ち悪い”と言う感情は湧かなかった。
寧ろ、この細い腕が傷だらけなのを癒やしてやれる存在になりたいと思った。
『千里…今はこの傷の理由は聞かない。千里が私を愛してくれるなら、私は千里の事を守る。何があっても傍に居る。それだけ私の想いは本気だよ?』
私は真っ直ぐ千里を見詰めて言った。
ゆっくりちゃんと伝わるように。
千里は見える傷と見えない傷を1人で背負って闘っている。
いつも穏やかで優しい千里が…。
そんな千里の支えになりたい。
私は千里の全てを受け入れたいと思った。
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