†現実と古傷†

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  仕事中みんなに言われた言葉。     『千里ちゃん、めっちゃ機嫌いいね』     当たり前。 私はいつもの2割り増しの笑顔で接客をしていた。 頭の中は樹里のお家に初めてのお泊まりと言う楽しみでいっぱい。   楽しみが後に待っている時は時間が経つのが遅い。 全くその通りだ。   何度も何度も時間を確認しながら時が経つのを待った。     やっと仕事が終わっていち早く携帯チェック。 すると、思わぬメールに私は固まった。     “ごめん、今夜は会社の友達に呑みにさそわれて断れんくて…お泊まりは今度にして欲しいんやけど良いかな?”     ―これは何?どう云う事?     今夜のお泊まりは前々から決まっていた事で、毎晩電話で楽しみだって言ってたのに…。 楽しみにしていたのは私だけ? 樹里にだって会社の付き合いとかがあるのは分かっている。 でも…でも…気持ちがついていかない。     ―私より友達の方が大事なの?     低レベルな疑問かも知れない。 ウザったい疑問かも知れない。 けれど、私の頭の中にはその疑問でいっぱいになった。   私はロッカー室からトイレまで走り声を殺して泣いた。 寂しくて不安で恐くて…胸が張り裂けそうになった。   確かに付き合い始めて1ヶ月近くしか経ってはいない。 けれど想いに時間は関係ないでしょ? 募っていく愛しいと云う気持ちが私の一方的なモノになっているような気がして苦しかった。    
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