†現実と古傷†

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  メールを打つ手が震える。     “うん、仕事のお付き合いも大事だもんね。気にしなくていいから楽しんできてね”     私にはこう打つしか出来ない。 我が儘を言って嫌われるのが恐いから。     “有り難う★明日はデートしようね”     樹里から返ってきたメール。 私は返信する事が出来なかった。 頭の中はグチャグチャで胸が苦しくて…     私はそのまま過呼吸に陥った。 こんな些細な事で心がパニックを起こしたのだ。 過呼吸なんて慣れている。 だからいつもポケットに入れている小さな袋で呼吸を落ち着かせた。   過呼吸の後は頭がボーとして痛くて動く事も困難。 私は暫くトイレにこもり、動けるようになってからフラつく足取りでロッカー室に戻った。   幸いロッカー室には誰も居なかったので私は床にヘタり込むように座った。 次から次へと溢れ出る涙を必死で堪え、フラつきながらも着替えて店を出た。   そのまま家に帰り、部屋に閉じこもった。 独りで居るのが恐い。 けれど、誰に助けを求めていいのか分からない。 直美にメールをしようとも思ったが、直美にばかり頼るのも迷惑だろう。 私はベッドに座り、孤独感や昔の恋愛のフラッシュバック、色々な気持ちが暴走しだして震えていく体を縮めて丸まった。    
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