過ぎし日々への想い

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―――1998年、夏――― 「あっち~!…チアはいいよな~、涼しそうで…。なぁ里美~、ジュースくれよ~!」 チアガールの広瀬里美に、なぜか隣に座っていた同じクラスの島崎航太は言った。 「も~…しょうがないなぁ、コーラとアクエリどっちがいい?」 「もちアクエリ!」 里美は『やっぱり』と思いながらスポーツドリンクをコップに注ぎ、航太に渡す。 「はい。こぼさないでよ」 「サンキュ♪」 今日は高校野球の決勝戦。里美達が通う高校の野球部が甲子園に出場できるかどうかを決める大事な試合の日だ。 天気は快晴、風もない。 1点差で迎えた9回裏、2アウト満塁。 相手側の攻撃。ここを押さえれば勝ちだ。 「ぷはっ、うめ~!やっぱ汗かいた後はこれに限るぜ!ほら、お前も一杯飲めや!」 ニカッと笑い、左手の甲で口を拭いながら右手に持ったコップを差し出す航太。今一つ緊張感のない航太にくすくすと笑いながら里美は言った。 「やだ航太、そのセリフ酔っ払いのオヤジみたい!」 「何ぃ~っ!かっわいくねぇな~お前!せっかくそんな可愛いミニスカ履いてんだから言う事ももう少しなんとかしろよな!」 「えっ…可愛い?」
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