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「くぅっ………」
何も出来ない自分に対して、涙が溢れる。先輩……いや、吸血鬼はそね様子を愉しそうに見ている。紅い瞳に、私の怯え、涙を流す姿が刻まれている……
「さぁ、食事の再開よ……」
ゆっくりと、私の首筋を鬼が噛む。針が刺すような、鋭い痛みを感じる
「…ん……やぁっ……」
「んふふ、ほんとにいい声で鳴くわね……」
くちゅくちゅ……
私の首筋を、鬼が舐める音が響く
………音?
そういえば、雉峰さんは………
『はあぁ!』
金属がひしゃげる耳障りな音がして、扉が、私と鬼の後ろを通り過ぎた!
「「え」」
驚いて、入口を見る。そこに、居たのは……
「き、雉峰…さん?」
艶艶した黒髪は、黄金色に染まり、クールな中に優しい光を放つ瞳は紅い……鬼の…瞳…だった……
「黄金色の髪………裏切りの鬼斬りか」
ククク、と鬼が私の首筋から舌を離し、雉峰さんを睨みながら低い声で笑う
「……鬼斬衆雉派筆頭、雉峰 イヅナ。悪しき鬼よ、我は汝を………斬る!」
雉峰さんの手には、鞘に収まった短刀が握られていた
「雉峰さん」
「天美宮さん、今助ける」
そういうと、短刀を抜き放つ。鈍い銀色の刃が、私を襲う鬼を写している
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