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「おい、伊波」
「…なんです?」
相変わらず壱はぴくりとも動かないまま、莉佳の前に立っている。否、立ち尽くしていると言った方が正しいだろうか。
「……いや。早瀬、引き戻してやれよ」
そう言って、軽く手を挙げて憂木は去って行った。
っていうか、先生が壱をこんなにしたんじゃない。有り得ない…。
「壱。いーちっ!おーい」
暫く顔の前で手を振っていると「あっ、え?」と間抜けな返事が壱から返って来た。
「壱、大丈夫?……でも、ありがとう。先生止めようとしてくれて」
莉佳が安堵して微笑むと、壱は無言のまま、背けた顔の前で両手をブンブンと振り続けた。
…変なの。
「よし!これで今日の仕事は終わりね」
「はい。お疲れ様です、莉佳さん」
「うん、お疲れ様」
なんか、沢山働いたから小腹が空いたな…。
「ねえ壱。帰りにケーキでも食べに行かない?」
「えぇ?!って、あ、はっはい…2人で、ですか?」
「あ、2人は嫌かな?」
「そそそそそんな!!そんな事ありませんっ!有り得ま…せ」
なんでこんなに慌てるんだろ。私、何か変な事言ったかな?言ってないよね。
「?…そう。壱ほんとに大丈夫?」
「は、はい…」
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