別れと思い出とはじまり

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図書館に着くと、崎浜くんが小難しい古文の本を数冊、机に並べて読み耽っていた。 「崎浜くん、難しい本読んでるね」 「ああ、伊波さん。結構面白いよ、この本」 そう言って本を指す。 どう見ても私には読めない…。 「あと、彼も」 彼? 崎浜くんの視線の先には、貸し出し席に座る壱の姿があった。 「早瀬くんが、どう面白いの?」 不思議に思って素直に質問する。 「んーと。僕よりずっと素直で、ずっと一途だよ。きっとね」 少し自嘲気味に言う崎浜くんに、何を話したの?なんて聞けなかったから、壱を見ながら「ふうん」とだけ返事をした。 文庫本と大判の写真集の整理を終わらせ、美術画評論や絵画を載せた本を主に別けられた書棚へと移動すると、一条くんが居た。 「あ、欲しい本は見つかったかな?」 手元を見ると既に数冊手にしているようだった。 「以前よりは、探しやすい」 その言葉に、私は素直に喜んだ。 「そう。一条くんは…どうして絵画に興味があるの?」 返却本を元の位置に戻しながら質問してみる。 「……一応、美術部だからな」 え? 「一条くん!!絵を描くの?!」 普通に失礼な発言なのは自分でも分かってはいたけれど、意外というか…何と言うかで。 「…………そんなに意外?」 「どっちかって言うと意外だけど!!絵、見たい!!」 今の私はどんな顔をしているんだろう。 一条くんは上品に頭を抱えた。 「良いよ、わかった」 .
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