過去と気持ちと縋る思い

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前夜祭まで時間がない。 分かってはいても、作業は思った程はかどらない。 「ねえ、壱。館内の準備はこれくらいにして、あとは朗読の練習する?」 「そうですね。衣装は当日ですか?」 「んー。とりあえず、前夜祭が始まったら練習する暇はないし、衣装は当日で大丈夫」 「分かりました」 練習を始めて暫くすると、校内アナウンスが前夜祭の始まりを告げる。 「あ、始まっちゃった」 「どうしますか?莉佳さん」 「壱はもう行ってきて良いよ。クラスの人達と約束あるでしょう?」 手元の本を閉じて、壱にそう促す。 「で、でも…」 「ほらほら早く!」 なかなか足を進めない壱の背中を軽く押す。 妥協した壱は「じゃ、じゃあ…また」と言って、図書館を後にした。 「ふぅ。道具の片付けでもしようかな」 軽く手を払うと、入口から声がした。 「前夜祭出ないのか?」 「一条くん。…図書委員だし、図書館開けてる間はいないとね」 なんて、言い訳がましい台詞を吐いてみる。 …本当はあまり行きたくないだけ。 .
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