過去と気持ちと縋る思い

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「あ…う、うん。片付けして閉館してたらあまり時間ないしねっ」 びっくり、した。 館内の明かりとは別に、薄暗い窓際に立った一条くんが月明かりで照らされて… それがあまりに、綺麗で。 「……そうか」 「明日はうちの部の展覧会もある。良ければ来てくれ。………じゃあ。返却助かった」 『ありがとう。絶対行くね』 そう伝えると、彼は一瞬だけ微笑し、背中を向けて暗い夜の中に溶けていった。 今日じゃなくても、朝で間に合うくらいにはなってるし、そろそろ帰ろうかな。 片付けにキリが着いたところで、館内照明を殆ど落とすと、器材の最終チェックと施錠を確認する。 「さすがに暗いなあ…」 外の月明かりでやっとうっすら見える程度だ。 「よし、確認終わりっ!鞄っ鞄っ」 カタン 「え?」 鞄を前に手を止め、音のしたほうへ視線を向ける。 「…まだやってたのか」 そう小さく聞こえた声が、シルエットに重なる。 入口の開かれたドアに腕をかけたシルエットに。 「先生……?」 .
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