過去と気持ちと縋る思い

8/8
前へ
/85ページ
次へ
ふと空を見上げると、満天の星が目にはいる。 「うわあ…先生っ、星キレイですよ!」 「ん?」 私の声に、一度視線を私に向けると同じように空を見上げた。 って、そういえば前夜祭終わったのかな? 終了時刻は確か23時だったような……。 「…!!」 薄暗い中、腕時計を確認しようと袖をまくると、いきなり凄い力で手首を掴まれた。 「時計なんか、見るな。」 不機嫌にも見えた迷いのない瞳が私を見据えて、力強い腕に強引に引き寄せられる。 抵抗なんて…出来なかった。 「……莉佳………」 消え入りそうなほど小さく発せられたその声は、抱きしめる腕とは違って、とても優しいものだった。 「せんせ…」 抱きしめられた先生の服から香る、嗅ぎ慣れない煙草の匂いが……少しだけ、考えることを忘れさせていた。 ☆ .
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加