本音とキオクとこれから

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◆ 「霧生さん」 プログラムがようやく3分の1終わった頃、俺に声を掛けたのは隣のクラスの早瀬だった。 「ああ、どした。何かあったのか」 「いえ、…そうではなくて。莉佳さん、もうそろそろですから」 「……。もうそんな時間か」 早瀬は煮え切らない態度で俺をみる。 「……何か」 「え」 「何か言いたいコトがあるんだろう、俺に」 言った途端、早瀬は顔を真っ赤に染め勢いよく俯いた。 「心配するな。何もないから」 察した俺は小さくため息を吐くと凝った首を鳴らし、早瀬の背中をバシッと手で叩く。 「っ…!」 「早瀬も着るんだろ、着ぐるみ。早く行こう」 それにしてもわかりやすい。……伊波さんは気付いてないのか。 図書館へ向かう途中の廊下で俺は眉間に皺を寄せて、早瀬とは別のもう一人の男のことを考えていた。 ◆ .
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